〈サク呑み酒場〉「世界一の唐揚げ」は、サラリーマンのオアシスにあった

〈サク呑み酒場〉

今夜どう? 軽~く、一杯。もう一杯。
イマドキの酒場事情がオモシロイ。居酒屋を現代解釈したネオ居酒屋にはじまり、進化系カフェに日本酒バー。どこも気の利いたツマミに、こだわりのドリンクが揃うのが共通点だ。ふらっと寄れるアフター5のパラダイスを、食べログマガジン編集部が厳選してお届け!

お通しは目の前の大皿料理から選ぶ

「こちらのお惣菜がお通しになりますので、この中からお好きなものをお選びください」。カウンター席の前に並べられた3種の大皿料理を指して、女将はにっこり微笑んだ。手前から、「小南家の肉じゃが」「杉山家のイワシ南蛮漬け」「安成家のナスの煮浸し」とのこと。どれもおいしそうだが、それ以上に料理名の前に付いた「〇〇家」がいったい何を意味するのか気になってしまう。

各400円。しっかりめの量で、「お通しでこんなにあるの!」と驚きの声が上がる。

実際「杉山家」は女将の名前から、「小南家」や「安成家」もスタッフの名前からきているのだそう。そして、この店の名前は「新橋二丁目九番地 らんたん」。その名のとおり、新橋二丁目九番地にある“小料理屋感覚”の酒場である。

左から、料理長の大住圭さん、女将の杉山直実さん。大住さんはフレンチ出身。杉山さんは「ナオミと飲みましょ」を手がけるYouTuberでもある。

入りやすい店構えで女性客も安心

同店があるのは新橋駅からほど近い、小さな飲食店が軒を連ねるエリア。古くは花街だった場所で、烏森神社のそばにある。新橋といえば“サラリーマンの街”として有名だが、同店の男女比は半々。店側としては当初、男性客7~8割をイメージしていたが、予想以上に女性客が多くなった。それだけ女性客にとって居心地のよい店だったというわけだ。また、年代は30~40代が中心だが20代後半の若い客もいて、さらに上は60代までと幅広い。

 

飲食店の店構えは、その時々の“時代の空気”が如実に反映されるもの。同店のまわりには古くから営業する店も多く、外から中が見えない店も少なくない。当時は普通だったこうした店構えも、イマドキの若者には少々ハードルが高いものがある。そこで、同店は店舗をガラス張りにし、店内を丸見えに仕上げた。これならどんな店か分かって安心感もある。こうした入りやすさも女性客や若い世代が増えた要因の一つとなっている。

ガラス張りで中が丸見えのため、初めての客でも安心。

クオリティの高いサワーが充実

イマドキの若者の飲酒傾向として挙げられるのが、ビールよりサワーやハイボールなどを好む人が案外多いこと。この事実を指して「ビール離れが進んだ!」などと短絡的に捉えるのではなく、ビール以外のアルコールのよさに着目する人が増えたと前向きに解釈した方が、嗜好の多様性を感じ取ることができる。同店ではこの点を強化し、サワーやハイボールをこれでもかと充実。こうしたポイントも、イマドキの若者にはとても魅力的に映る。

 

例えば、サワーは割り材にこだわってクオリティを高めており、「トマトサワー」は国産トマト果汁で作ったトマトリキュールを。「国産ライムサワー」はハチミツ入りの愛媛産ライム果汁を。いったい何が出てくるのかワクワクさせられる商品名の「レモンサワー・トゥザフューチャー」は国産レモン100%の果肉入りリキュールを使用。これはもう実際に頼んでみるしかない。

割り材のリキュールや果汁にもこだわって、魅力あるサワーに仕立てる。

相性のよいハイボールと唐揚げで舌鼓を打つ

一方、ハイボールは、「山崎ハイボール」「白州ハイボール」「知多ハイボール」など各種揃えるが、一番人気は「カラス森ハイボール」。烏森神社にちなんだハイボールだ。こうした新橋になじみのあるワードを用いたネーミングは客としても興味を引かれ、思わず注文したくなるもの。実はこの商品。名前はハイボールだがウイスキーは用いておらず、代わりにシェリー樽で5年貯蔵した麦焼酎をベースとしたリキュールを使用する。だが、そう聞かされなければ焼酎とはまったく気づかない、驚きの一杯だ。

「カラス森ハイボール」600円は黒板メニューで、「シェリー樽5年貯蔵」とアピールする。

ハイボールと相性のよい料理といえば、その代表格は揚げ物。同店でぜひとも食べておきたいのが「世界一の唐揚げ」で、丸っこい独特の形をしている。ガブッとかじると外はカリカリで、中はとってもジューシー。この唐揚げ、切り分けた鶏モモ肉を1個ずつ鶏皮で包むことで肉汁を逃さないよう工夫されており、衣は薄く、鶏肉の持ち味をダイレクトに楽しむことができる。からあげグランプリで最高金賞を受賞した大分の専門店から仕入れている。

「世界一の唐揚げ」600円。168℃の油で2度揚げし、計6分40秒揚げてカリカリに仕上げる。1人客にはハーフサイズにも対応。

刺身もサラダも、面白いように酒がすすむ

魅力的な酒場にはうまい刺身があるもので、同店では1種に絞った季節の刺身を提供。例えばこの時期なら春の訪れを告げるサワラだ。淡白な魚なのでひと工夫し、2種の味を楽しませてくれる。1つは燻製で、桜チップの冷燻に。もう1つは皮目をバーナーで炙り、香ばしさをプラス。鮮度のよい魚にひと手間加える贅沢さゆえ、これはもう日本酒が飲みたくなる。常時6~7種揃えた「季節の日本酒」から好みのものを選ぼう。

「サワラのお刺身」700円。手前が皮目をバーナーで炙ったもので、奥が燻製にしたもの。薬味はわさびと梅肉を添える。

「酒場ではサラダも立派なつまみ」。そう感じさせてくれるのが「特製ドレッシングのクレソンサラダ」である。クレソンと赤水菜のシンプルなサラダだが、これが実に酒がすすむおいしさだ。味の決め手は、リンゴ、アンチョビ、メープル、ハチミツなど数十種の材料で作った特製ドレッシング。サラダをシャリシャリ噛むごとにクレソンの苦味がほどよく舌に伝わり、それでいてまろやかな味わいで、実にバランスの取れたおいしさを堪能できる。

「特製ドレッシングのクレソンサラダ」500円。酒に合うテイストに仕上げられており、酒がすすむこと間違いなし。

“マグロのたたき”と“醤油”と“オリーブオイル”の巧みな調和

うまい締めの食事メニューがあるのも魅力的な酒場の条件で、同店でオススメなのが「とろたく丼」。静岡のマグロ専門問屋から仕入れる高品質のマグロのたたきを使用し、醤油とオリーブオイルで味つけする。これをご飯に盛り、その上からぶわっと万能ネギをちらし、刻みタクアンを添える。思わずハッとする、彩りの鮮やかさに目を奪われること間違いなし。

 

自分で醤油をかけて食べるスタイルではなく、店側が最初からベストな味つけに仕上げているため、うっかり醤油をかけすぎる心配もない。醤油が主張しすぎることなく、マグロの甘味をいい具合に引き出しており、さらにオリーブオイルが加わることで風味のよい一体感が生まれている。見ばえのよさ。そして、何ともいえない心地よい後口。同メニューで、この日の素敵な体験を脳裏に刻み込もう。

「とろたく丼」600円。その見ばえのよさから、最後にいい印象が脳裏に刻まれる。

店頭の“壁の文字”と“照明器具”が目印

烏森神社周辺の昔ながらのたたずまいのあるエリアで飲んでみたいと思っても、若者には少々ハードルが高いものがある。それならまず、気軽に入りやすい「新橋二丁目九番地 らんたん」を体験し、これを足がかりにまわりの店を攻めてみるのもよいだろう。だが一番よいのは、同店に何度も何度も通って今という“時代の空気”を身にまとい、一緒に新しい歴史を積み重ねていくことだ。

 

店頭の壁には「新橋二丁目九番地」と店の住所が書かれており、さらにその横には照明器具のランタンが置かれている。「そのまんまじゃん!」と思わずそうツッコミたくなる、親しみやすさが同店の真骨頂だろう。ガラス戸ごしに店内を覗けば、楽しそうな雰囲気につい吸い込まれそうになる。ハードルの高さなど微塵もない、烏森神社周辺のニューフェイスの店なのだ。

暖簾に「らんたん」の文字は入るが、これといった看板はない。店頭の壁の住所の書き込みと照明器具のディスプレイ。これが同店なりの「看板」なのである。 
【本日のお会計】
■食事
・お通し 400円
・世界一の唐揚げ 600円
・サワラのお刺身 700円
・特製ドレッシングのクレソンサラダ 500円
・とろたく丼 600円■ドリンク
・カラス森ハイボール 600円
・レモンサワートゥーザフューチャー 500円合計 3,900円

※価格はすべて税抜

 

<店舗情報>
◆新橋二丁目九番地 らんたん
住所 : 東京都港区新橋2-9-12 蟹江第二ビル 1F
TEL : 03-6206-1516
営業時間 : 【月~金】 16:00~23:30(L.O 22:30) 【土】 16:00~23:00(L.O 22:30) ※8月14、15日はお盆休みとさ…
定休日 : 日曜日、祝日

※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。
※本記事は取材日(2020年3月5日)時点の情報をもとに作成しております。
 
取材・文:印束義則(grooo)
撮影:松村宇洋

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〈魚コース1軒め〉4番地「パーラー じゃりンこ」

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「じゃりンこ盛り」

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「ハマグリのつかみ取り」

そして見逃せないのが、体験型の「ハマグリのつかみ取り」880円。取ったハマグリは厨房で酒蒸しにしてもらえて、レモンの利いた貝だしが胃に染み渡る味でたまりません。

 

まず1軒めでジャブを打つための利用もいいし、連れが待ち合わせに遅れるなんていうときに先に軽くやっておくか……という場面にも良さそうなお店です。

 

※価格はすべて税抜

 

<店舗情報>
◆パーラー じゃりんこ
住所 : 東京都千代田区内幸町2-2-3 日比谷国際ビル B2F
TEL : 不明の為情報お待ちしております
営業時間 : [月~金] 11:30~22:30 [土] 11:30~19:30
定休日 : 日曜日、祝日

〈魚コース2軒め〉6番地「本格焼酎とかごしま料理 TAGIRUBA」

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※価格はすべて税抜

 

<店舗情報>
◆タギルバ
住所 : 東京都千代田区内幸町2-2-3 日比谷国際ビル B2F
TEL : 不明の為情報お待ちしております
営業時間 : [月・火・水・木・金] 11:30~14:00 17:00~22:30 [土] 13:00~19:;30
定休日 : 日曜日、祝日

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※価格はすべて税抜

 

<店舗情報>
◆食堂つつむ
住所 : 東京都千代田区内幸町2-2-3 日比小路
TEL : 不明の為情報お待ちしております
営業時間 : [月~金] 11:30~14:00 17:00~22:30 [土] 11:30~19:30
定休日 : 日曜日、祝日

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※価格はすべて税抜

 

「さつま豚酒場 八」
住所:東京都千代田区内幸町2-2-3 日比小路
営業時間:月曜〜金曜 11:30〜15:00 / 17:00〜22:30 土曜 11:30~19:30
定休日:日曜日、祝日

【野球コース】郷土愛がストレートに伝わる空間で飲む

開幕が待ち遠しいプロ野球。例年なら既に行われているはずの、スタンドでビールを飲みながらの応援はできなくても、ここでなら野球ファンの熱気を感じながらのはしご酒が叶うかもしれません。

〈野球コース1軒め〉8番地「HAKATA MEGUSTA」

⼈なつっこい接客が売りの角打ちと、スペインバルの要素が融合したスタイリッシュな立ち飲み店。博多で数店舗を展開する人気店の東京初進出となる店舗で、店内には「福岡ソフトバンクホークス」のユニフォームがしっかりかかっています。のみならず、一番奥には「西鉄ライオンズ」のユニフォームもあることから、連綿と続く地元福岡への郷土愛が伝わります。

ほとんどのつまみメニューが190円~500円前後という安さもウリ。なかでも「鯖スモーク」190円 は、どんなお酒とも相性が良く、訪れたお客さんのほとんどがオーダーする人気メニューです。

福岡県内の市名が書かれた札を持って席を移動することで会計が分かるシステムを採用するなど、コミュニケーションが⽣まれやすい⼯夫を凝らした同店。プロ野球が開幕したら、スマホで試合速報をチェックしつついろんな人と仲良くなって、狭い店内をあっちへ行ったりこっちへ行ったり、乾杯も盛り上がりそうです。

 

※価格はすべて税抜

 

<店舗情報>
◆ハカタ メグスタ
住所 : 東京都千代田区内幸町2-2-3 日比谷国際ビル B2F
TEL : 050-5374-8461
営業時間 : 11:30~14:00 17:00~22:30
定休日 : 日曜日、祝日

〈野球コース2軒め〉1番地「熱々鉄板チェインズ」

広島風お好み焼きをはじめとする鉄板料理と店主の華麗な鉄板さばきが楽しめる「熱々鉄板チェインズ」。店内にはユニフォームなども飾られているし、スタッフのユニフォームも赤と、広島東洋カープ一色なお店なのです。

「カキの鉄板蒸籠蒸し(4粒)」

熱々の料理とお酒を飲んでからお好み焼きで〆る広島スタイルが同店のオススメとのことで、まずは広島といえばの一品「カキの鉄板蒸籠蒸し(4粒)」650円 。蓋を開けた瞬間、塩と昆布の香りが広がり食欲をそそり、蒸してもプリプリの牡蠣は絶品です。

「カープ缶チューハイ」

ドリンクは、球団公認の「カープ缶チューハイ」300円。店の空気とともに雰囲気を堪能するならこの一択! 味もキリリと辛口で、あとで食べるオタフクソースのかかったお好み焼きとも相性ピッタリ。

「広島焼き」(メニュー名まま)

〆にいただく「広島焼き」(メニュー名まま)700円。十分な大きさなので、何人かでシェアしてつまむのにも最適。重ね焼きのプロセス毎に異なる温度で焼いて、よりおいしく仕上げてくれます。

 

※価格はすべて税抜

 

<店舗情報>
◆熱々鉄板 チェインズ
住所 : 東京都千代田区内幸町2-2-3 日比谷国際ビル B2F
TEL : 070-2837-5644
営業時間 : [月~金] 11:00~14:00 17:00~22:30 [土] 11:30~19:30
定休日 : 日曜日、祝日

 

地下鉄の最寄駅からアクセス至便な場所にできたのは、人と人とのふれあいと様々な食文化を楽しめ、気軽に立ち寄れるユニークなグルメスポット。一度と言わず、何度か通って、自分なりのお店の組み合わせによる“はしご酒パターン”を見つけるのが楽しみ方のひとつになりそうです。

 

取材・文:舘野頼正

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